高血圧の予防のために
食事について
食塩をとり過ぎると血圧が上がります。しかし、この食塩による血圧上昇の程度(食塩感受性)には個人差があって、食塩を多くとってもまったく血圧が上がらない人もいます。
家族に高血圧の多い人や高齢者では、食塩を多くとると血圧が上がる人が多いようです。
今のところ、日常的にかんたんに食塩感受性を測る方法はないので、だれでも食塩を減らしたほうがいいとされています。
現在、日本人の食事摂取基準(2015年版)において食塩摂取目標値は、18歳以上男性8.0g/日未満、18歳以上女性:7.0g/日未満となっています。塩分の多い食品として、しおから、漬け物、干物、ラーメンやそばなどの汁やスープ類があります。それに、みそ、しょうゆ、ソースなどの調味料は使いすぎないように、料理はうす味にするなどの工夫をしましょう。しかし、うす味にしても、塩分を使った料理をたくさん食べると、トータルではたくさんの塩分をとることになるから注意が必要です。また、下記のように、加工食品などにもかなり塩分が含まれているものが多いので、塩分量を知るための参考にしてください。
加工食品に含まれるおおよその塩分 | ||
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加工食品 | 塩分の量 | |
塩ます1切れ(80g) | 約4.6g | |
焼きちくわ1本(100g) | 約2.4g | |
梅干し1個(10g) | 約2.0g | |
しらす(半乾燥) 大さじ山盛り1(10g) |
約0.6g | |
バター大さじ1(13g) | 約0.2g | |
プロセスチーズ1切れ(20g) | 約0.6g | |
ロースハムうす切り1枚(20g) | 約0.6g | |
焼き豚1切れ(25g) | 約0.6g | |
食パン1枚(60g) | 約0.8g |
外食(それぞれ1人分)に含まれるおおよその塩分量 | ||
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メニュー | 塩分の量 | |
天ぷらそば・山かけそば・月見そば | 約6.0g | |
ざるそば | 約3.0g | |
ラーメン | 約4.0g | |
みそラーメン | 約6.0g | |
カツ丼 | 約4.5g | |
天丼 | 約4.0g | |
握りずし | 約4.0g | |
サンマの塩焼き(しょうゆはかけない) | 約1.5g | |
豚肉のしょうが焼き | 約3.0g | |
おひたし (かけしょうゆ小さじ2/3含む) |
約0.5g | |
冷奴(かけしょうゆ小さじ2/3含む) | 約0.5g | |
納豆(しょうゆ小さじ1含む) | 約1.0g | |
だし風味調味料顆粒状1袋(6~10g) | 約2~3g | |
固形ブイヨン1個(4g) | 約2.5g |
塩分を減らす方法
自分や家庭で食事をつくるとき、また、食卓で食べるときに、塩分を減らすための方法を以下に 挙げていますので参考にしてください。
塩分を控えるための12ヶ条
1.薄味に慣れる
塩味の薄い食事に慣れることが第一歩です。昆布やかつおぶしなどで、だしをとると薄味でも風味豊かにおいしく食べることができます。また、新鮮な食材を利用して、薄味で素材の味を楽しむのもよいでしょう。
2. 漬け物・汁物の量に気をつけて
塩分の多い漬け物や汁物は、食べる回数と量を減らしましょう。漬け物は浅漬けか、塩出ししたものにします。汁物では野菜などの具の多いものにすれば、1回にとる汁の量が少なくなります。麺類を食べるときは、汁は残すようにします。
3. 効果的に塩味を
献立にはいろいろな味付けを利用し、塩味は効果的に使うようにしましょう。塩は食品の表面にさっとふりかけると少なくても塩分を感じることができます。
4.「かけて食べる」より 「つけて食べる」
しょうゆやソースなどは、かけて食べるより、つけて食べたほうが塩分の摂取量が少なくてすみます。
5. 酸味を上手に使いましょう
酸味を上手に使って、献立の味付けに変化をつけると、塩分を減らすことができます。
レモン、すだち、かぼすなどの柑橘類や酢などを和え物や焼き物に利用しましょう。
6. 香辛料をふんだんに
とうがらしやコショウ、カレー粉などの香辛料を上手に使って味付けに変化をつけるのも、塩分を控える工夫の1つです。
7. 香りを利用して
ゆず、しそ、みょうが、ハーブなどの香りのある野菜、海苔、かつお節などを加えると、薄味のメニューに変化もつきます。
8. 香ばしさも味方です
香ばしさもまた塩分のとりすぎを抑えてくれます。焼き物にする、炒った胡麻やくるみなどで和えるなど、調理に利用しましょう。
9. 油の味を利用して
揚げ物、油炒めなど、油の味を利用して食べるのもよいでしょう。胡麻油やオリーブオイルを、食べる前に少しかけることで風味が増し、おいしく食べられます。ただし、脂質のとりすぎにならないように、油を使ったメニューばかりにならないよう気をつけましょう。
10. 酒の肴に注意
酒の肴に合う料理は塩分が多く含まれるものが多いので、少量にしましょう。
11. 練り製品・加工食品には気をつけて
かまぼこ、はんぺん、薩摩揚げなど魚の練り製品や、ハムやベーコンといった肉の加工食品も塩分の多い食品です。食べる量に気をつけましょう。
12. 食べすぎないように
せっかくの薄味の料理でも、たくさん食べれば塩分の量もカロリーも多くなります。食べすぎないように気をつけましょう。減塩しょうゆや減塩みそも、使う量が多ければ塩分も増えます。使いすぎては意味がありません。
日常生活で気をつけること
1.肥満を防ぎ、適正体重・腹囲を維持する
肥満は、高血圧と深い関わりがあります。肥満が大きな危険因子であることは、多くの研究や調査で明らかになっています。とくに、皮下よりも内臓に脂肪がつく内臓脂肪型肥満(上半身型肥満・リンゴ型肥満)が、血圧の上昇と深く関連があります。こうした肥満者が体重を減らすと、実際に血圧が下がるという報告があります。
肥満は血圧を上げるだけでなく、肥満自体が心血管病の危険因子の一つで、肥満していて高血圧の人は、体重を標準体重近くにすると、血圧や脂質異常症、高尿酸値、血糖値なども適正値に近づく可能性が高くなります。肥満というほどではなくても、毎年少しずつ肥満に近づいている人は、今のうちに標準体重を守る生活習慣を身につけておきましょう。
2.適度な運動をする
現代人の肥満は、食べすぎとともに、運動不足が大きく関わっているので、太っている人はたいてい運動不足だといえます。ふだんから体をよく動かす習慣のある人には、肥満の人が少なく、コレステロールや中性脂肪などの血清脂質も適正で、心血管病の危険因子が少ないです。また、運動によってインスリンのはたらきが改善されますから、糖尿病になりにくくなる効果もあります。
ふつう、運動をしている最中は血圧が上がる。ぽかぽかと暖かくなって、ほっぺたがカッカッとしてくるのは、血液循環がよくなって、血流量も増しているためで、この時には血圧が上がっています。ところが、一般的には運動習慣のない人の血圧のほうが、運動習慣のある人にくらべて高くなっています。そして、酸素をたくさん使う運動(有酸素運動)は、長期間くり返して続けると、血圧を下げる作用があることがわかっています。勧められる有酸素運動は、ウォーキングや軽いジョギング、平らなところでのサイクリング、ゆっくりと長い距離を泳ぐなどです。
こうした運動を継続して行うと、長期には、高血圧の人は収縮期も拡張期も血圧が下がってきます。
3.ストレスや急激な温度差に要注意
「そんなに怒ると血圧が上がるよ」などとよくいわれますが、怒り、悲しみ、緊張が続く、つらい体験などによるストレスを「情動的ストレス」といいます。情動的ストレスは血圧を上げるという報告がある一方、ストレスと高血圧の関係を証明できなかったという報告も多くあります。
しかし、情動的ストレスが、少なくとも一時的に血圧を上げることは間違いない事実で、私たちはそれを経験的にもわかっていると思います。そのため、高血圧の予防には、かかったストレスはなるべく早く解消し、心身ともにリラックス状態にもっていったほうがいいでしょう。入浴、アロマテラピー、マッサージ、好きな音楽を聴く、好きな花を買ってくる……自分なりのリラックス法を見つけてみましょう。
寒さが血圧を上げることは、多くの研究や調査で明らかにされています。季節による血圧変動を見ると冬に高くなり、心血管病による死亡率も冬にいちばん高くなります。そのため、高血圧の人は、冬の寒さを避ける努力をしましょう。居室だけでなく、廊下やトイレ、浴室も十分に暖かにし、部屋ごとの温度差を少なくしましょう。お風呂は、熱い湯を避けて長湯はせず、室温は20℃ぐらいにして、38~42℃くらいの湯に5~10分間入るにとどめた方がいいでしょう。高血圧の人は、冷水浴やサウナはやめましょう。